「転職先が決まっていないけど、仕事をやめるから不安」「仕事のためにスキルアップしたいけどあまりお金をかけたくないな」と、お悩みの方もいらっしゃるでしょう。
失業等保険には4つの種類の給付があるのをご存じですか?失業等保険とは、失業したときにもらえる基本手当以外にも再就職したときや高齢者向け、スキルアップのための支援などさまざまな雇用に関する給付制度があります。
そこで、今回の記事では失業等給付の4種類を説明していきます。今後退職を考えている方や育児・介護で休職を考えている方などに役立つ記事になっているので、ぜひ参考にしてみてください。
失業等給付の4種類とは
雇用保険には失業したときにもらえる基本手当や再就職したときにもらえるお祝い金のような手当などがあります。
失業等給付を大きく分けると下記の4種類に分類されます。
- 求職者給付
- 就職促進給付
- 教育訓練給付
- 雇用継続給付
今回は、失業等給付の4種類の中なかでも利用者が比較的多い手当をピックアップして紹介していきます。
求職者給付
求職者給付とは、失業者の生活の安定と求職活動に専念してもらうための給付制度です。
求職者給付には下記の手当があります。
- 基本手当
- 技能習得手当
- 寄宿手当
- 傷病手当 など
そのなかでも、失業時にもらえる「基本手当」とハローワークで求職手続き後にケガした場合にもらえる「傷病手当」を紹介していきます。
基本手当
基本手当は失業手当とも言われていて、失業中の生活を保証し求職活動を支援する制度です。
受給期間は離職の翌日から1年間です。しかし、出産や育児など就業できない理由があるときは最大3年間受給が延長できます。
【もらえる条件】
・離職前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヵ月以上ある65歳未満の方
・倒産や解雇の場合は上記とは違い、離職前の1年間に雇用保険の被保険者期間が通算6ヵ月以上あること
【受け取れる手当額】
1. 賃金日額=退職前6ヵ月の給与総額÷180
2. 基本手当日額=賃金日数×45〜80%(年齢・賃金日額によって変動する)
3. 基本手当の総額=基本手当日額×所定給付日数
上記の3ステップで計算していきますが、年齢や賃金日額によって算入する数字が変わってくるので初心者の方が正確に求めるのは少し難しいでしょう。
そのため、電卓や電子辞書などで有名なCASIOが運営しているkeisan「雇用保険の給付額(失業給付金)の計算」を利用すると、簡単に受給できるおおよその手当額がわかります。
【所定給付日数】
基本手当では給付される日数が決まっています。無期限で給付してしまうと、求職活動をしない人が増える可能性があるからです。
所定給付日数は「自己都合・定年退職など」の場合と「解雇・倒産など」の場合では日数が変わります。今回は該当する方が多い自己都合・定年退職などの所定給付日数を表で紹介します。
被保険者期間 | 1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
所定給付日数(65歳未満まで) | 90日 | 120日 | 150日 |
傷病手当
傷病手当とは、ハローワークで求職手続きをして受給資格が認められたあと、病気やケガをして求職活動ができない状態になってしまうと支給される手当です。
健康保険の傷病手当金とは違う手当なので間違わないように気をつけましょう。また、雇用保険の傷病手当と健康保険の傷病手当金の併用はできません。
【もらえる条件】
・求職手続き後に病気やケガで15日以上働けない場合(基本手当はこの期間もらえない)
・基本手当の受給資格がある方
【受け取れる手当額】
受け取れる1日あたりの傷病手当金額は基本手当と同額です。
就職促進給付
就職促進給付とは、再就職を早くしてもらい、長く働いてもらうための制度です。就職促進給付では下記の手当が支給されます。
- 就業手当
- 再就職手当
- 就業促進定着手当
- 常用就職支度手当
- 移転費 など
また、就職促進給付は基本手当の受給資格がある方のみ受け取れる制度になっているので、注意しましょう。
就業手当
就業手当とは、非正規雇用(契約期間1年未満)で就業した場合にもらえる手当です。例えば、アルバイトやパートなどが該当します。
【もらえる条件】
・基本手当の受給資格がある方
・基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上ある方
・一定要件に該当する方
【受け取れる手当額】
就業日×30%×基本手当日額
【1日の支払い上限】
・60歳未満は「1,836円」
・60歳以上65歳未満は「1,485円」
再就職手当
安定した正規雇用で就業した場合にもらえるのが「再就職手当」です。例えば、正社員や雇用保険の被保険者を雇った事業主などが該当します。
【もらえる条件】
・基本手当の受給資格がある方
・基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある方
・一定要件に該当する方
【受け取れる手当額】
1. 支給残日数が3分の1以上の場合:所定給付日数の支給残日数×60%×基本手当日額
2. 支給残日数が3分の2以上の場合:所定給付日数の支給残日数×70%×基本手当日額
就業促進定着手当
再就職手当を受け取った方が6ヵ月以上雇用状態が続き、6ヵ月間の1日あたりの賃金が直近の前職と比べて低下している場合「就業促進定着手当」の支給を受けられます。
【もらえる条件】
・再就職手当を受けた方
・6ヵ月以上再就職した勤務先で働いている方
・6ヵ月間の1日分の賃金が直近の前職より低い方
【受け取れる手当額】
(離職前の賃金日額-再就職手当の支給を受けた再就職の日から6ヵ月間に支払われた賃金額の1日分の額)×再就職の日から6ヵ月間内における賃金の支払いの基礎となった日数。
しかし受け取れる手当額には上限があるので、利用する前にハローワークの就職促進定着給付で確認しましょう。
教育訓練給付
教育訓練給付とは、個人のスキル・キャリアアップを支援する給付制度です。ただし、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了しないと、支給はしてもらえません。
教育訓練給付には下記の手当があります。
- 教育訓練給付金
- 教育訓練支援給付金
今回は、教育訓練給付金の「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」について説明します。
一般教育訓練給付金
一般教育訓練給付金には、専門性がなく特定の学校に行かなくても勉強や資格取得ができるものが該当します。例えば、TOEICや日商簿記などが対象です。
【もらえる条件】
・受講開始時点で、同じ事業主に雇用保険の被保険者として雇用されていた期間が1年または3年以上ある場合(1年以上は支給をはじめて受ける方)
・離職日の翌日から1年以内に受講開始した場合
【受け取れる手当額】
受講費用の20%(上限10万円)が訓練終了後に支給されます。
専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練給付金とは、看護師や美容師、調理師など独学では取得ができない専門的な資格をとる場合に支給してもらえる制度です。
【もらえる条件】
・受講開始時点で、同じ事業主に雇用保険の被保険者として雇用されていた期間が2年または3年以上ある場合(2年以上は支給をはじめて受ける方)
・離職日の翌日から1年以内に受講開始した場合
【受け取れる手当額】
受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6ヵ月ごとに支給されます。
雇用継続給付
雇用継続給付とは、定年や育児、介護で賃金が減る部分を少しでも補う制度です。
雇用継続給付には下記の手当があります。
60歳時点と比べて60歳〜65歳未満の賃金が75%未満に下がり、そのまま働き続けている場合に支給してもらえる制度です。
■高年齢再就職給付金
60歳以降に再就職した場合に支給されます。
■育児休業給付金
育児のために休暇をとる場合に支給される制度です。
■介護休業給付金
介護のために休暇をとる場合に支給される制度です。
失業等保険に関するよくある質問
最後に、失業等給付に関するよくある質問を紹介します。
Q. アルバイト・パートでも基本手当はもらえる?
はい。雇用保険の加入条件を満たし被保険者になればアルバイトやパートでも基本手当の受給が可能です。
雇用保険の加入条件:「週20時間以上の所定労働時間があり、31日以上の雇用期間が見込める者」
Q. 転職先が決まっている場合も失業等保険の手続きをしたほうがいい?
転職先が決まっている場合は失業等保険の受給資格がないため手続きは不要です。
失業等保険は失業者の求職活動を支援する制度なので、すでに新しい勤務先が決まっている方には不要の制度になります。
Q. 妊娠して30日以上働けなくなった場合はどうしたらいい?
雇用保険は、病気・ケガ・妊娠・育児等の理由で30日以上働けない場合は、働けない日数分だけ受給期間を延長できます。
延長期間は最長3年間です。ただし、延長の手続きは必要なので忘れずに延長申請しましょう。
失業等保険を理解して上手に活用しよう!
失業等保険の制度内容はいかがでしたか?少し内容が難しいですが、転職先を決めずに離職される方や休職される方など、該当する方は手続きを忘れずにおこないましょう。
失業中も手当が貰えて、早く再就職先が決まればお祝い金のような感じで支給してくれるので利用しないと損です。
また、スキルアップを考えている方や新しいスキルを身につけたい方も「一般教育訓練給付金」を利用すれば受講費用の一部を負担してもらえます。
このように、失業だけでなくキャリアや休職にも手厚くカバーしてくれる制度です。失業等保険を利用するには手続きが必ず必要なので、管轄のハローワークで忘れずに申請をおこないましょう。